
信用バブル崩壊後の不良債権問題の深刻化で追い詰められた米国は、
「自己責任原則」や「時価会計ルール」など米国社会の真髄を貫くルールを自ら放棄しはじめた。
これは急場しのぎとしては有効かもしれないが、世界の信頼を損なうことで、米国の弱体化は加速し、基軸通貨ドルの凋落の歩みを早め、将来に取り返しの付かない禍根を残すことになるとの見方が世界の投資家の間で聞かれる。
<自己責任原則の放棄>金融界に限らず、米
国社会の根幹をなすルールは「自己責任原則」であり、これを法律に例えれば米国の憲法のようなものだ。
しかし、3月に資金繰りに窮した
米証券ベアー・スターンズに緊急融資枠を設定して救済をはかったことを皮切りに、このところ米国が様々な場面で自己責任原則を放棄するケースが目立ってきた。
「インベストメント・バンクが先導した信用バブルが弾け、金融界が苦境に陥ったことで切羽詰った米国は、とうとう自己責任原則という『踏み絵』を踏んでしまった」とファースト・インターステート・リミテッド香港社長、中山茂氏は指摘する。
自己責任原則は時価会計ルールと並んで、他国が米国スタンダードを受け入れる際に「フェアな基本理念」として認識され、米国スタンダードは世界的な広がりをみせた。
「これを放棄することは、米国の自己否定を意味し一番の強みを捨てたことになる。今後、米国の信用は、国際的にも国内的に失墜し、弱体化が加速するだろう」と中山氏は予想する。
ベアー救済劇の翌日には、米連邦準備理事会(FRB)が米証券会社に対する連銀窓口貸出(Primary Dealer Credit Facility=PDCF)の開始を発表したが、証券会社は本来FRBの監督外にある業態で、流動性供給はFRBの使命を逸脱した異例の措置だ。
だが、バーナンキFRB議長は、当初は半年間の期限付きだったPDCFを年末を越えて延長する用意があるとまで表明した。
今月14日、米政府は経営難が懸念されている
2つの政府系住宅金融機関(GSE)、連邦住宅抵当金庫(ファニーメイ)(FNM.N)と連邦住宅貸付抵当公社(フレディマック)(FRE.N)の救済に着手、現在は1公社につき22億5000万ドルの融資枠の上限を引き上げ、両公社の資本増強のために株式を購入する方針を表明。さらに連銀窓口貸出枠で資金供与する提案もした。
米国が自己責任原則を放棄してまで、必死にウォール街を救済するのは、マイナス成長やリセッションを回避したいからだ。
だが、著名投資家のジム・ロジャーズ氏は「リセッションはシステムに存在する過剰を取り除くという意味で『善』である」と言う。
「
米国が過剰(マネー)にまみれたウォール街を救済して、リセッション回避をはかることは愚かしく、米国は、実際にリセッションを体験するより、はるかに高価な代償を支払うことになるだろう」とし、「無分別な資金供給によって、FRBは自らの衰退を招くだけでなく、激しいインフレを招き、基軸通貨としてのドルの終焉を早めるだろう」とロジャーズ氏は警告する。マネーモーニングとのインタビューで答えた。同氏は
米政府のGSE支援について「完全なる自己破滅的行為」と評している。
都合に合わせてルールを変更するということは、米国が政治の世界で何度もやってきたことだ。これが経済の世界でも通用するのか、目下、金融市場に試されている。ドルに対する
バスケット通貨(ユーロ、円、ポンド、カナダドル、スウェーデンクローナ、スイスフラン)の加重平均値であるドルインデックスは、2001年7月の120.90から4割超下落して3月には過去最低の70.689となった。現在は72台を推移している。
ロジャーズ氏は、米国債はここ1―2年の間に現在のトリプルAから格下げされるだろうと予言する。<時価会計原則の裏技>米国は金融機関の決算について、時価会計ルールを早々と放棄し、違法ではないものの異なる会計処理を活用し、国を挙げて金融機関の粉飾決算の片棒を担いでいるとの批判が、米国以外の国々で上がっている。
「かつて米国は、
日本に対して時価会計ルールの厳格適用を声高に要求し、日本の金融機関を潰しておいて、自分が困ったときには、勝手にルールをネジ曲げるのは許しがたい」(本邦金融機関)。「時価会計のポイントは、ガラス張りで全体が見渡せることだ。少しでもルールを曲解すれば、全てが台無しになる。米国がフェアなアカウンティングとして世界に売り込んだものを、自らの都合で柔軟運用するとは、呆れて物が言えない」(アジア系金融機関)と絶句する。
米財務会計基準審議会(FASB)は昨年、金融商品の会計処理における公正価値の算出基準としてFAS157号を導入し、米大手金融機関でも採用している。FAS157号の下では、時価会計が適用されるのは、レベル1と呼ばれる資産のみだが、米金融機関保有の金融資産のうち、レベル1に区分されるものは3割にも満たない。他方、時価算定が困難な資産であるレベル3資産は増え続けている。
米国が政府を挙げて支援しているGSEの会計も柔軟運用の一例だ。
「ファニーメイについてはバランスシートで資産の評価が甘いと言える。レベル3資産については十分な引き当て・償却を行っておらず、同公社が保証する債券の引当金(負債サイド)も全く十分とは言えない」と東海東京証券チーフエコノミストの斎藤満氏は指摘する。
斎藤氏によれば、ファニーメイは資産がわずか2%目減りしただけで、株主資本を超える損失が発生するほど資本が脆弱な状態で、損失処理ができるほどの資本増強が早急に必要だという。プール前セントルイス地区連銀総裁は
「両公社が破たん状態にあると認識するべきだ」と述べている。
斎藤氏によれば
米金融機関が活用する会計の裏技には少なくとも3種あるという。
第1に、損失が出ている保有証券を「満期まで保有するつもりで、売却可能で流動性が高い」というカテゴリーに分類することで、「簿価」評価し、評価額の変化が永続的と判断されるまでは「その他包括的利益」に繰り入れる。これによって評価損は表面化しない。
第2に、レベル3資産(流動性も指標もなく各社が独自の推定によって評価する資産)をヘッジするためのデリバティブ資産についてのみ未実現収益を計上し、損益計算書のトレーディング収益に入れる。実際、米投資銀行はレベル3資産から巨額の未実現収益を計上している。
第3に、大きな損失を出した場合は、金融当局に時価評価を一時凍結してもらう。バーナンキ議長は「時価会計は、時に投げ売りを誘って市場を不安定にする側面がある」との認識を示し、「必要であれば一時凍結することもありうる」ことを示唆している。[東京 18日 ロイター]
スポンサードリンク
⇒ランキング応援お願いします!
人気blogランキング

生命保険協会の松尾憲治会長(明治安田生命社長)は18日の定例会見で、生保業界保有の米政府系住宅金融機関(GSE)ファニーメイ、フレディマック2社の関連債券について「リスクの低い安全資産との認識で、現時点で大きなリスクファクターになるとは思っていない」と述べた。
松尾会長によると、
生保各社が保有しているGSE2社の関連債は、住宅ローン担保証券(RMBS)が中心だという。その上で
「RMBSはプライム(住宅)ローンを対象にしていて、格付けの高いトリプルAの部分。現時点で、大きな毀(き)損は想定していない」と語った。さらに
「RMBSは、仮に原資産に毀損が出た場合でもGSEからの保証がある。そしてGSEの健全性は、政府の支援がしっかりなされる」として米当局の支援策もプラスに働くとの認識を示した。
明治安田生命としては、2008年3月末現在でGSE2社のRMBSを900億円保有しているが「今後、米国の証券投資のスタンスを変えるつもりはない」という。
ロイターの調査によると、日本生命、第一生命、明治安田生命、住友生命の大手4社の2008年3月末のGSE関連債の保有合計は、機関債とRMBSを合わせて、4兆円を超えていることが分かっている。[東京 18日 ロイター]
スポンサードリンク
⇒ランキング応援お願いします!
人気blogランキング

米国の政府系住宅金融機関(GSE)支援策や空売り規制強化策などの効果で、米金融リスクはいったん後退したかに見えたが、18日の東京市場では株買い/債券売りの持続性に懐疑的な見方が広がった。
震源となったのは17日の米国市場引け後に発表されたメリルリンチ(MER.N)の第2・四半期決算だ。事前予想を上回る巨額の損失が明らかになり金融市場は再度警戒を強めている。<米系中心に海外勢が売り越し姿勢>
株式市場では日経平均が反落した。朝方は米株高、円安、原油安など外部環境の好転を材料に買いが先行したものの、米国市場の引け後に発表された
メリルリンチ(MER.N)やグーグル(GOOG.O)の決算が予想を下回ったことを受け、今晩以降の米国株式市場への警戒感が高まった。
GLOBEX(シカゴの24時間金融先物取引システム)の米株先物も軟調に推移している。「米系中心に海外勢が売り越しを継続している。メリルの決算が悪かったことで、
18日のシティグループ(C.N)の決算を見極めたいとのムードが広がり、全般に売買が見送られた」(準大手証券エクイティ部)という。
米メリルリンチが17日発表した第2・四半期決算は、純損益がモーゲージ関連などリスク資産の評価損計上などに伴い48億9000万ドルの損失となり、赤字幅は予想を上回った。
決算発表を受けてムーディーズはメリルの債務格付けを1段階引き下げて「A2」にすると発表している。
金融市場では根強い米信用不安などにより、「日本の連休中に米株が急落する可能性もあるのではないかとの懸念」(国内金融機関)から株買い/債券売りの持続性に懐疑的な見方が広がった。株価が後場下落に転じた半面、安寄りした国債先物は後場に入って小じっかりとなっている。米当局はドル防衛策とも受け取れる政策を矢継ぎ早に出してきたが「金融システム不安がさらに深刻化するようだと、ドル安、米株安が加速しかねない」(国内金融機関)と市場の不安心理は高まっている。
<評価損はオルトA、プライムローンに波及か>
ある国内証券の債券ストラテジストは
「メリルリンチは決算で、残存資産残高の10%を超える評価損を計上した。このままでは確実にあらたな資本増強が必要になる」と指摘する。同ストラテジストは
「評価損拡大の背景には、焦げ付きがサブプライムローンだけではなく、これまで比較的優良とされてきたオルトA、プライムローンにまで波及していることがある。これが今晩のシティをはじめ、来週にかけて相次いで発表される金融機関の決算で損失が拡大するのではないかとの懸念につながっている」という。
為替市場では原油安を背景に海外市場で一時107円台のドル高に進んだものの、ドル買いの材料が乏しく、東京市場では106円前後まで押し戻されている。メリルの決算に関して、国内金融機関関係者は「ある程度内容については織り込み済み」との見方を示す。一方で、外銀筋は「(発表された決算内容について)前日の米株式市場で消化されていないため、今晩の米株式市場の値動きを見極める必要がある」と慎重な見方だ。
<原油安でインフレ懸念は後退か>
原油価格が米国市場で節目の1バレル=130ドルを割り込んだことで、過度なインフレ懸念は後退しつつある。大和住銀投信投資顧問上席参事の小川耕一氏は「原油価格はチャート上でもダブルトップをつけた。投機相場は終わりに近づいている。足元は金融不安や実体経済の減速などで市場のセンチメントは悪いが、米金融株が買われ、原油が売られるなど徐々に資金の流れが変わってくるだろう」とみている。小川氏は「内外の企業決算も商品市況の急騰を受けて4─6月期の業績悪化は仕方ないが、原油価格が下がれば、7─9月以降の回復期待が強まる」と話している。
モルガンスタンレー証券ストラテジストの神山直樹氏は「原油価格がこのまま下落傾向に入るのかは現時点でまだ不透明であり、企業業績に反映されるのは下落がしばらく続いてからだ」と慎重姿勢を崩さない。もっとも、日本株は世界の株式に対してアウトパフォームするとみており、カントリーアロケーションは日本に対し強気だ。「企業業績の下方修正が早かった。減益でも株主還元を実施できる余裕がある。対ドルでの円の安定もあり相対的な日本株の優位性がある」と神山氏は指摘している。
[東京 18日 ロイター]
スポンサードリンク
⇒ランキング応援お願いします!
人気blogランキング

米シティグループ(C.N)が18日発表した第2・四半期決算は、
25億ドル(約2600億円)の純損失となった。
クレジット市場の悪化に伴う評価損計上や信用関連損失が響いた。前年同期は62億3000ドルの黒字だった。
1株損益は0.54ドルの損失。前年同期は1.24ドルの利益だった。
継続事業ベースの損失は22億2000万ドル(1株当たり0.49ドル)だった。
[ニューヨーク 18日 ロイター]
スポンサードリンク
⇒ランキング応援お願いします!
人気blogランキング