
白川方明日銀総裁は15日、金融政策決定会合後の記者会見で、
景気の現状について、4月の見通しに比べ、原材料価格が一段と上昇し、これが経済・物価の両面に表れているとの判断を示した。
もっとも、スタグフレーションには突入していないとし、交易条件の悪化が止まれば成長率を押し上げる方向に働くとして、2009年度には成長率が回復していくとの見通しを示した。このため、金融政策としては、先行きの姿と政策のタイムラグを考えれば、
利下げする必要はないとの認識を示した。世界の中央銀行が利上げ方向に動いていることについても、現在は協調しないことが望ましく、日銀としてできることは現状分析し、情報発信していくことだと述べるにとどめた。
<景気下振れの最大の要因は交易条件の一段の悪化>
今回の決定会合では、4月の「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」の見通しを点検し、中間評価として公表。新たに成長率と物価見通しの数値を四半期に1回公表することとした。白川総裁は「現在のように経済物価の不確実性が高いときに、より充実した情報発信ができるように体制を整えた」と説明。長期にわたり金融政策の変更ができない中で現状維持が適当だと判断した理由について、迅速に市場に説明して納得してもらえるよう、説明責任の充実に取り組む姿勢を打ち出した。
今回中間評価として政策委員が検討し直した数値見通しでは、成長率が4月より下振れして08年度は1.2%にとどまり、潜在成長率にも達しないとの予想となった。白川総裁は「今回の下振れの最大の要因は交易条件の悪化」と説明。これが企業収益や設備投資に影響、個人消費も伸びが鈍化しているとした。「スタグフレーションに入ったとは判断していない」としながらも、「景気は下振れリスクに注意する必要がある」と警戒感を示した。
もっとも、
中間評価では、09年度の成長率は1.5%とやや回復に向かう見通し。現在の資源価格の高騰が収まらずに交易条件の悪化が広がっている中で先行きなぜ回復に向かうのか、その理由を問われた白川総裁は
「資源価格は今後も新興国を中心とした世界経済の成長が続くため、高水準で推移するとの見方を前提としており、これ以上上がりも下がりもしないと想定している」と説明、「交易条件の悪化が止まれば成長率を上押しする」との見方を示した。
もっとも、新興国の需要の増加や供給制約、それにマネーの流れなどの要因が絡んで資源価格の上昇が止まらない状況の下で、なぜこれ以上上昇しないとみているのかという点についての十分な説明には至らなかった。
<利下げの必要なし、できることは現状分析のみ>
08年度に経済成長率が潜在成長率を下回る見通しを示し、景気がさらに下振れすることに注意するとした以上、利下げの選択肢も議論された可能性があるのではないか、との疑問もわいてくるが、白川総裁は「日銀としては金融政策の効果発現までのタイムラグを1年半から2年程度とみていること、また先行きの経済・物価の姿を展望しながら判断すると、今ここで政策を変更する必要はない」との判断を示した。
一方で、物価の見通しは4月より上振れとの判断を示したことについては、国際商品市況の上昇から波及してインフレ期待の高まりから2次的な値上げが起こるというような「セカンドラウンド・イフェクトは現在のところ起きていない」との認識を示した。したがって「金融政策で対応しなければならないことはない」としたが、「今後そうした物価上昇が起きないか丹念にみていく」とし、「中央銀行としてインフレリスクに対しても決して鈍感ではなく、十分認識しているということを情報発信していく必要がある」とも述べた。
各国中央銀行はインフレ懸念の高まりから利上げ方向に動いているが、白川総裁は「現在は中央銀行間でいわゆる政策協調は望ましくないというのが多数説」と述べ、他国と協調して利上げする状況にはないとの考えをにじませた。その上で
「やれることは現在起きていることを分析し、世界に向けて情報発信していくこと」とした。
[東京 15日 ロイター]
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